「広告作るのって、とんでもなく面白いのかも…!」と、はじめて思ったときの話

「日清食品の採用競合は誰だと思う?」



求人広告の仕事を始めてすぐの、新人研修の時です。講師だったクリエイティブディレクターがこう言いました。あのカップヌードルやチキンラーメンでおなじみの日清食品が求人広告を出したとき、求職者を取り合うライバル企業はどこかという質問です。

東洋水産(マルちゃんの会社)やカトキチ(今はテーブルマークですね)、その他食品メーカーの名前が挙がりました。うんうん、とみんなの話を聞いたあと、そのクリエイティブディレクターは「でもな、日本を代表する企業で働きたい学生をターゲットにすると、採用競合はソニーやトヨタかもしれん」と言ったんです。それを聞いたとき、別に広告オタクでもなく、ちょっと面白そうで時給のいいバイトがしたいなーくらいの気分で入社した私は、漫画みたいにビビビと電気が走るような衝撃を受けました。そして、「この仕事、とんでもなく面白いのかも…!」と思ったのです。

それまで私は、マクドナルドのライバルはケンタッキーやモスバーガーだと思っていました。でもそうとは限らない。「ランチのお金と時間を節約したいOL」を狙おうと思えば「コンビニのお弁当」がライバルだし、「外回りの合間に休憩したい営業マン」を呼びこもうと思えば、「ドトール」とか、もしかしたら「空いてる図書館」がライバルかもしれない。スマートフォンが一般的になって打撃を受けているのは携帯電話市場ではなくパソコン市場だ、という記事も最近話題になっていました。あるネット広告会社の社長は、チラシをたくさん出している会社に営業をかけるといいと言っています。クライアントの強みは何で、ターゲットとして狙うのは誰で、そうすると誰がライバルになるのかをよく考えないと、得られるはずの利益を得られなくなってしまう。戦う相手を間違えてはいかんのです。

クライアント・ターゲット・ライバルの3者をよく観察することで新しい視点が見つかり、それを組み合わせることで楽しいことや便利なことが増えたり、お金が動いたりするのが面白くってしかたない(お金だいじ。広告作る人はお金そのものというより「お金が動くこと」が好きじゃないとだめだと個人的には思います)。広告作りにはいろいろな行程があり、どんな広告を仕掛けるか考えたりキャッチコピーの1文字1文字に凝ったりそれぞれに面白さがありますが、私はこの3者について考えるのが1番好きです。

当たり前ですが、同じクライアントでもターゲットとライバルが変われば広告の内容はガラっと変わります。

世の中にあふれる広告を見ると、「この商品の魅力はここだろう!なぜここをもっとアピールしないんだあああ!」「うう、ツメが甘い…。これではあのへんのライバルに出し抜かれてしまうぞ!」と思うことがあります。けっこうあります。まあそれぞれ様々な事情で掲載されている形に落ち着いたのでしょうが、非常にもったいない。

これは「3C分析」と言われる超超基本的な考え方なので、諸先輩方は「オマエ何を今更そんな話をwww」と思われているかもしれませんが、前述のもったいない広告を見る限り、その超超基本的な考え方すら浸透しきっていない気がします。

ここのあたりからクライアントと一緒に悩めるようなお仕事ができたらいいなあ、と思う今日この頃です。

※たぶんクリエイティブディレクターが例に挙げたのはソニーとトヨタだったと思う…。任天堂だったかもしれません。衝撃受けたわりにそのへん曖昧ですみません。2005年のことです。今はどんな企業を例に出してるんだろうなあ。

※3Cとは「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字です。私が説明するまでもなく、事例やテンプレなどいろんな人がまとめてくださってますので、各自お調べくださいませ。


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