「最後は1枚でも多く書いたやつが勝つ。質より量。」書道家の柿沼康二さんの芸術観が凄い。


「最後は1枚でも多く書いたやつが勝つ。質より量。」

「手本を本気で真似よう真似ようとして、どんどん個性をなくしていって、それでも出てしまうのが自分の個性。」

金曜の夜にめずらしく夜更かしをしていたら、「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」という番組をやっていて、何気なく見ていたらとても印象に残る言葉があったので書き起こしてみました。(もうけっこう眠くて、歯磨きしたり加湿器に水を足したりしながら流し見していて、真面目にメモ取っていたわけれではないので、もし記憶違いなところがあったらすみません)

心ゆさぶる××× | 心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU
http://www.ntv.co.jp/rockyou/kokoro/2012/12/121.html

ゲストは書道家の柿沼康二さん。「アキレスと亀」や大河ドラマ「風林火山」の題字を書いたりされていて、主要な書道の賞をいくつも獲りまくっているとにかくすごい方なのだそうですが、特に書道に詳しくない私にとっては初めて聞くお名前でした。

いくつか映された作品は、どれもダイナミック。ワイルド。大胆。子どもや動物が描いた絵のように、人の意志ではコントロールできない領域で墨が掠れ、飛び散っているのにも関わらず、超優秀なデザイナーが作りこんだロゴデザインのように完璧なバランスを保っている。書き足すこともできず、2度と同じ物を書くこともできないスリリングさも含めて、普段デジタル文化にジャブジャブに浸っている自分にとっては余計に新鮮でした。

そこまで凄い腕前を持った人にも関わらず、毎日何時間もかけて書の練習をしているそうです。しかも、自分で好き勝手書くわけではなく、お手本を見ながら。その話の流れで出てきたのが最初に書いた2つの言葉でした。「質より量」は書道家のお父さんに言われたことで、ちょうど柿沼康二さん本人が質に走っていた時期だったので、かなりガツンときたという旨のことを話していらっしゃいました。

ライターやコピーライターでも、伝統的な(たぶん。前の職場ではよく聞きました)トレーニング方法として、「写経」と「とにかくいっぱい書く」というものがあります。写経なんてしばらくしてないなあ…。量も…。質にこだわってその時点での自己ベストが出せたとしても、それを更に超えていくには量をこなすしかないのかもしれません。こんな凄い人でもやってるんだから、私みたいな末端構成員はなおさら100本ノックとか500本ノックとかちゃんとやらなきゃと恥ずかしくなりました。個性の話も納得です。写経していてどうしても文字を打ち間違えてしまう…なんてことはないでしょうが、もし「ここはもっとこうした方がいい!」と確信できるポイントがあれば、それが個性なのだと思います。

他にも、弘法大師(だっけな多分)の書は1画だけでも何十ものテクニックが入ってる、上からスッと書いたんじゃこの角度は出ない、横からグーンと入ってこないとだめ、みたいな話も面白かった。書として残るものは2Dだけど、書く行為自体は3D。書ってそういう舞踏みたいなものの軌跡として見ることもできるんだなあとか、発見でした。小学生の頃に習い事や授業でやったお習字は全く楽しいと思わなかったけど、今なら楽しめるかも。やってみたいことが1つ増えてしまいました。

しかしこの番組、俳優さんが番宣に出るような番組なのかなーと思ってあまりチェックしてなかったけど、情熱大陸とかトップランナー的な回もけっこうあるんだなあ。不覚。そして、長く続いているなあと思ったら一社提供ではないけれどキリンがメインのスポンサーでした。一社提供の番組って、質が高くて長く続いている印象が強い。今後も面白い人いっぱい呼んでほしいなあ。こういうことがあるから、テレビっ子やめられないんですよねー。


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